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『リカバリーする効果的な方法』

◎失敗をリカバリーする方法!

「私の人生は失敗ばかり」という思い込みを持っている人にも、必ず成功体験があります。

そして、そこには思いがけない『ストレングス』が眠っています。

自分の人生をリカバリーするヒントをお伝えします。

<未完の経験はいつまでも記憶に残りやすい >

「私の人生、失敗ばかり。うまくいったことがないんです。」・・・本当にそうでしょうか?

失敗ばかりの人生なんてありえません。現にこうして今を生きているだけで、

いくつもの困難や挑戦に打ち勝っているはずなのです。ただ、やり遂げられた体験は忘れやすく、

やり残した体験はいつまでも記憶に残りやすいだけのこと。これを「ツァイガルニク効果

といいます。

ツァイガルニク効果は、旧ソビエト連邦の心理学者ツァイガルニクが行った、

未完の課題と完遂した課題に対する記憶の差に関する実験結果から名づけられた心理学用語です。

<未完の記憶があるから人は向上する>

たくさんおもちゃを買ってあげているのに「いつも買ってくれない」と泣くのはなぜ?

夢中になって求めたことでも、それが達成されてしまうと興奮から冷め、途端に印象が薄れてしまいます。

逆に、達成されなかったことは、悔しさや心残りからいつまでも覚えているものです。

ささいな例ですが、子どもにおもちゃを買ってあげると、喜びも買ってあげたおもちゃもすぐに放り投げ、

しばらくして「いつもおもちゃを買ってくれない!」と不満を言ってきたりします。

学芸会で「上手にできたね」とほめられたことは忘れてしまっても、

マラソン大会でリタイアしたことは忘れない、という人も多いと思います。

また、志望校に合格すると喜びも受験の苦労も忘れてしまうものですが、

失敗した人は、いつまでもその屈辱を覚えているもの。

苦労せずに希望の会社に入社できた人は、就活への印象も薄いものですが、

入社できなかった人は、いつまでもその記憶が頭から離れないものです。

このように、人の心には達成したことは忘れやすく、達成できなかったことの方が

記憶に残りやすいという特徴があります。

もちろん、それは必ずしも悪いことではありません。未完の記憶は自分を向上させ、

同じ失敗を回避するために必要なものでもあると思います。

未完の記憶が強く残っているからこそ、「次こそ達成しよう」と意志を強くしたり、

失敗を回避するための知恵を働かせることができるのではないでしょうか。

<成功体験の中に『ストレングス』が隠れている >

『ストレングス』を生かせばコンプレックスも克服できる

「私の人生、失敗ばかり。うまくいったことがないんです」という人にも、必ず成功体験はあります。

未完の記憶の印象が強すぎて、成功体験の記憶が薄れているだけなのです。成功体験を掘り起こし、

そのときに自分が頑張ったこと、努力して達成できた喜びを思い返すことができれば、

自分に自信を持つことができます。

記憶の中に埋もれている成功体験を思い出してみましょう。

学校の勉強はあまりできなかったけど、料理は得意で、家族にいつも「お前が作る料理はおいしいね」と

ほめられた。

運動神経が鈍くて、体育の成績はいつも評価が低かったけど、マラソン大会の前に毎日走り込みを頑張って、

学年ベスト30に入ったことがある。

このように、自分の中には必ず何かの成功体験が眠っているものです。その体験を生かして、

自分の『ストレングス』(強み)を見つけていきましょう。

「学業は苦手だけど料理は得意」という人は、苦手だった学業へのコンプレックスを掘り返すのではなく、

「料理が得意」という才能を『ストレングス』と捉えて、それをより生かしていくことを

考えていけばいいのです。

コックやパティシエなどの職業を選択してもいいでしょうし、家庭や友人においしい料理をふるまって、

家族を幸せにすることもできます。

「運動神経は鈍いけど、持久走は頑張った」という経験を持つ人は、忍耐と持続力で困難を

克服していく力という『ストレングス』を持っている人です。

その『ストレングス』はあらゆる分野で生かすことができます。コンプレックスだったスポーツの中にも、

マラソンや登山のように、持久力を生かせるジャンルがあります。

それらにトライすることで、運動への苦手意識を克服することができるかもしれません。

<人生はいつでもリカバリーできる >

ネガティブな思い込みに埋もれず、今ここから人生をリカバリーしましょう。

この『ストレングス』は、近年ソーシャルワークの領域で非常に注目されている概念です。

たとえば、身体や精神に障害を持っている人は、健常者と同じパフォーマンスでは活動できないかもしれません。

しかし、「できないこと」に着目するのではなく、自分が持っている『ストレングス』を見つめ、

それを生かしていく方法を具体的に考えていけば、社会や家庭の中で自分を生かす方法が見つかるのです。

『ストレングス』を生かし、失ったものを回復していくことを『リカバリー』といい、

病気や障害に直面した人のセルフヘルプ活動の中でよく聞かれる言葉です。『リカバリー』は、

必ずしも以前と同じ状態に戻すということではありません。喪失体験や挫折を経て、

自分の人生の意味に気づいたり、新たに生きる目的を見つけたりする、

精神面での回復が重視されているのです。生きていれば多くの人が、成し遂げられなかった挫折感から

コンプレックスを抱えたり、対人関係で傷ついて自分に自信が持てなくなったりします。

そんなときには、自分の『ストレングス』を見つめ、それを生かす方法を考えてみましょう。

そして、『自分の人生はいつでもリカバリーできる!』という意識を持っていきましょう。

人生は一度きり。だからこそ『ストレングス』を生かし、よりよい人生を送っていこうではありませんか。