[ ホメジメント ]
◎褒め言葉「3S」:部下が自発的に動くようになる技術
人間関係を良好に保つために、相手を「褒める」ことが秘訣であることは誰もが感じることでしょう。
誰かに「褒められる」ことにより、脳内神経伝達物質である「ドーパミン」が分泌され、
意欲が高まることはよく知られています。
有名な「褒め言葉」の『3S』というものがあります。
「すごいね」・「さすがだね」・「すばらしいね」の『3S』。
とくに褒められたことがないまま年齢を重ねた場合、
褒めることが苦手なかたが多いのも現実です。
自分がされていないわけですから、意識しないとなかなかできません。
ですから「ホメジメント」です。
「褒める」と「マネジメント」をくっつけた造語。
意識しないと、部下を褒めることができない上司は、褒めるプラン(P)を考えます。
1日1回は褒めよう、とか。
部下がこのようなことができたら「すごいね」と声をかけようとか、決めるのです。
そして実行(D)します。
そこからは、定期的に「正しく褒めているか?」
「褒めるタイミングを逃していないか?」とチェック(C)し、改善(A)していきましょう。
このようにPDCAサイクルをまわすことが「ホメジメント」です。
ただ、いざやろうとすると、なかなか難しいのです。
<「褒める」側の動機付けとは?>
褒められるという「社会的報酬」によって、相手のやる気が生まれることはわかります。
しかし「褒める」側にしてはいかがでしょうか?「褒める」という意欲です。
ホメジメントサイクルをまわしていけばわかりますが、相手を「褒める」動機付けがないと、
褒めようにも褒められない、ということがあるのです。
「すごいね」・「さすがだね」・「すばらしいね」と上司だって言いたいでしょう。
しかし褒める習慣がない上司たちは、部下がどういうことをしたときに褒めたらいいのかわからない、
ものなのです。
それに、「褒める」というのは、何らかの優れた行いに対して評価し、称えることです。
褒める相手が何かをした後でなければ、褒めたくても褒めようがありません。
つまり、「褒める」側の期待する行動があり、相手がその行動をとる前にではなく、
その行動の後にでしか褒めようがない、ということです。
「君、これから私の期待通りの成果を出してくれるんだよね?
すごいね、さすがだね、すばらしいね」などと褒めたら、
相手は未来の行いを上司から強要されたと感じ、良い気分はしません。
また、それが本当に「褒める」に値する出来事なのか、ということも重要なファクターです。
「君、最近、資料の提出期限を守るようになってきたね。
すごいね、さすがだね、すばらしいね」
などと言って部下を褒めたらどうでしょうか?
期限を守って資料を提出しただけで「すばらしい」などと褒められたら、
何だか嫌味に聞こえはしないでしょうか?
ホメジメントを意識すると、こういう発見があるのです。
<「褒める」にも、相手の行い次第である>
まとめると、正しく褒めるためには、相手の行為に以下2点が伴っていることが条件です。
☆評価・賞賛すべき行いであること。
☆評価・賞賛すべき行いがすでに終わっていること。
己に厳しい人は、「評価・賞賛すべき行い」の基準がとても高いかもしれません。
ですからそのハードルを少し下げて、相手が何か変わろうと努力していることがあれば、
積極的に褒めてみましょう。
しかし、ハードルを下げても評価・賞賛すべきことがない。
何も変わろうとしない。
兆候すら見せない、という相手を褒めることはやめます。
相手が間違った認識をしてしまう、という副作用もあるからです。
「あるべき姿」と「現状」とのギャップを正しく認識させることも上司の役目です。
そういうケースでは褒めるのではなく、リードすべきです。
「あるべき姿とのギャップを埋めていこう」とリードし、その差が縮まってきたら、
相手の行いを褒めると良いでしょう。
まず褒める習慣を身につけたあと、正しく褒められているかもチェックする。
「ホメジメント」の精度が上がっていけば、人間関係を良好に保つことができます。
現在は、NLP(神経言語プログラミング)、発達心理学の理論を応用して対応する
手法の展開も行われておりますが、
何よりも基本は、「たった一言のほめことば」です。
効果を上げる部下の育て方、動かし方のポイントとしまして、 『6つのホメる技術』をご紹介致します。
ほめる技術1: 「なんのためにほめるのか」を明確にする。
叱咤激励しながら部下を動かしていた時代は去り、現在は「ほめて動かすコミュニケーション」が
マネジメントスタイルの主流になっています。
とはいえ、むやみやたらにほめたところで部下は成長しません。
それどころか、ほめてばかりいるとネガティブな反応が返ってくることもあるかもしれません。
それは、「なぜ、ほめられているのか」がきちんと伝わっていないからなのです。
そしてその原因は、リーダー自身が「なんのためにほめるのか」、
その目的を明確に自覚できていないことにあるとも言えます。
リーダー目的は、組織をまとめ上げ、成果に邁進するチームにすることですがそこで、
最終的な目標・成果を常に意識し、何に価値を置いてほめるのかを明らかにしたほうが良いというわけです。
そして目的をはっきりと自覚したら、臆することなく堂々と部下をほめるべきです。
そうしますと部下のやる気を引き出せるだけでなく、ほめられた行動に部下の焦点が向かいます。
ほめる技術2: ほめる前に興味を持って観察する。
リーダーはほめる前に、「この人はどういう人だろう」などと興味を持って部下を観察すべきです。
ただし気をつけなくてはいけないのは、観察の目的が「あら探し」ではないということ。
あくまで「相手を理解したい」という気持ちで、愛情を持って観察することが大切だということです。
人は安心できる環境でないと、十分に能力を発揮できません。
しかし「やっていることをリーダーに見てもらえている」とわかれば、部下も安心できるわけです。
だからこそ、まずは興味、愛情を持って観察することが大切だということです。
なお、ほめるのが苦手な日本人は、ほめやすいことをほめてしまいがち。
しかし、それは間違いです。
なぜなら人は、誰が見てもわかる結果をほめられるより、
陰で行ってきた努力や工夫、アイデアなど、すぐには目にはつかない細部をほめられることに
喜びを感じるものですから。
そのため、そうした部分もきちんとほめるようにすれば、
部下は「ちゃんと見てくれている」と感じ、上司に対する信頼感はぐっと高まります。
ほめる技術3 :部下が安心して働ける環境を整える。
ほめて部下を動かすためには、職場環境が整っていることが大前提。
リーダーが何を言おうと、安心して働ける職場環境にない場合、そこに説得力は生まれないからです。
日々やる気を醸成する職場環境づくり。
顧客だけでなく働く人をも大切にし幸せにする企業風土の確立。
人は「職場は自分が輝ける場所である」と考えるようになりますとやる気が芽生え、頑張れます。
そこにいて行動するだけで「認められ、ほめられ、ときには表彰される」となりますと、
働き甲斐のある職場です。
職場を“自分が輝ける場所”と思えれば、人はそこから離れようとしなくなり、
むしろ自分の居場所を守ろうとして働き始めます。
心を開き、いろいろなことにチャレンジしようと素直に思い、動くということ。
そのため、安心して働ける環境を整備することこそ、リーダーが取り組む最重要課題となります。
ほめる技術4 :「人格」ではなく具体的な「行動」をほめる。
部下をほめる第一の目的は、あくまで組織の生産性を向上させて成果を上げること。
組織全体の成果は、ひとりひとりの行動の積み上げでしか上げることができないわけです。
そこで、ほめるときは行動にフォーカスし、その行動を具体的にほめるようにすべきです。
最も伝わりやすいのは、部下がよい行動をした直後のタイミングでほめること。
良いことをした直後にほめると、心に響きやすく効果も高まります。
とはいえ、部下がよい行動をしたその場に居合わせなかったということもあるでしょう。
そんな場合、部下のよい行動を伝え聞いたら、次に会ったときすぐにそのことをほめると良いのです。
そのためにも普段から、誰かが良い行動をしたら、
リーダーのもとに報告があるような環境を整えておくことも必要です。
伝聞形式でほめることは、直接ほめられるのとはまた違い、
チームの一員として認められた印象を強く与えることとなります。
ほめる技術5: ほめるテーマを決め、事前に共有する。
大切なのは、常に部下の行動を観察しつつ、良い行動があったらすぐにほめて伸ばすこと。
そしてほめる目的は、部下を育て成果につなげること。
そこで、どんなふうに成長してもらいたいか、部下をどのように伸ばすべきか、
事前にプランニングしたうえで、計画的に行うべきです。
ただし、プランニングといっても、それほど難しいことではありません。
「今週はどんな分野を強化したいか」、ほめるテーマを決めておくだけ。
たとえば、「今週は“スピード&サービス”を充填的に賞賛する」といった具合です。
また、テーマを決めたらチームで共有することが大切です。
共有すれば、部下やメンバーもそのテーマ(行動)を意識するため、より効果が上がります。
そして、ミーティングの場などで、誰のどんな行動が賞賛に値していたかを共有すれば、
「なるほど、そういう行動もほめられるのか」といった更なる共有が生まれます。
ほめる技術6: 欠点も長所として注目する。
ネガティブとポジティブは表裏一体。
たとえば「作業が遅い」ことをポジティブにとらえれば、
「作業がていねいだ」と言い換えることが可能になります。
つまり、どんな特徴もすべて長所として変換すれば、ほめることができるということです。
「理屈っぽい人」は「論理的な人」であり、「口下手な人」は「聞き上手な人」でもあるということです。
言葉をポジティブなものに変換し、積極的に部下の長所を見つけていくことが大切です。
例)ネガポジ変換表
①ネガティブ ⇒ポジティブ
②あきらめが悪い⇒粘り強い
③あわてんぼう⇒取りかかりが早い
④いばっている⇒プライドがある
⑤怒りっぽい⇒熱い情熱がある
⑥臆病な⇒用心深い
⑦おせっかい⇒世話を焼く
⑧堅苦しい⇒きまじめな
⑨変わっている⇒独創的な
⑩頑固⇒意思が固い
⑫計画性がない⇒臨機応変な
⑬ダマされやすい⇒人を信じられる
⑭ぼーっとしている⇒自分の世界がある
⑮無口な⇒思慮深い
※人材を「人財」と表す。
「自ら動く生産性の高い部下は、まさに財(たから)である」という発想です。
大切なのは、その財を失うことなく輝かせること。
それが組織の行動力となり、成果につながっていくということです。
・・・『ホメジメント』ご実践頂ければと思います。
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