322[ 心に刺さるコメント術 ] ◎そのコメント、「刺さって」ますか?

[ 心に刺さるコメント術 ]

◎そのコメント、「刺さって」ますか?いいコメントとは、いったいどんなものを指すのでしょうか。・・・

「なるほど!」の腹落ち感や、「そのとおり!」の共感、不思議と モチベーションが上がる感じ等々。

この「刺さる」は、いろいろな 感情がこめられた言葉です。

なかでも、いちばん「刺さる」を使い たくなるのが、「そうそう、それが言いたかったんだよ」と、

思わ ず膝を叩きたくなるようなコメントを読んだり聞いたりしたときで はないでしょうか。

今を生きる私達、世の中のさまざまな出来事に 対して、だれもが違和感を強めているはずです。

「いまの世の中お かしーんだよ!」・「さっきのあいつの態度、気に食わねー!」と、

たんなる怒りや否定では、声が大きければ大きいほど、伝わるものも伝わらない。

豊富な経験やボキャブラリー、映像が浮かぶような視点や巧みな比喩など、多くの才能が要求されるだけに、

違和感を言語化すること、それも、ふつうのトーンで懇切丁寧に説明することは、とても難しい作業です。

何だろう、このざわざわする感じ。

言いたいことはあるんだけど、言語化できないモヤモヤ感。

うすうす感じてはいるんだけど、うまく言えない。

ああ、ここまで出てるんだけどなあ・・・と。

こんなじれったさを、みごとな表現力でうまく代弁してくれたときのスカッとした爽快感。

多くの人がそんなコメントに刺さり、「そう、それ!」と言いたくなるのだと思います。

「あの人はいつもいいこと言うなあ」・「やっぱり彼の言うことはひと味違うよね」・・・

そんなふうに周囲から一目置かれるような「刺さる」コメントを発するには、どんな技術が必要なのでしょう。

<綿密に用意するほど「想定外」のリスクは高まる>

「明日は何を話そうか。

どんなことを言えばウケるだろう?」など と、自分のコメントを綿密に考えてはいませんか。

脚本でも書くよ うに台詞の形にしてノートに書いて練習しないと気がすまな い。

・・・たしかに、多くのビジネス書にはこう記されています。

「コメントは、事前にしっかり用意しましょう」・・・ですが、「事 前に用意しない。」で、一度やってみましょう。

用意することを、 やめただけで、総合的なコメント力はアップします。

もちろん、ま ったく準備がいらないわけではありません。

たとえば、自分のプロジェクトが開発した新商品の発表会見などというときには、

「この 商品のアピールポイントはここ」と自分のなかで確認しておく作業 は必要でしょう。

ただし、事前にやっていいのはその程度。

「ここ で一発、ギャグを入れる」などと、その内容まで練って原稿にまとめ、

さらにはそれを暗記するなどはもってのほかです。

時間は、絶 え間なく移り変わっています。

東北を襲った東日本大震災の悲劇を 思い出してください。

2011年3月11日14時45分と14時46分は、 わずか1分の違いなのに、その1分で世界は激変してしまった。

昨 日と同じ明日などないのです。

少し大げさかもしれませんが、変化 は日常茶飯事です。

昨日のギャグが今日スベる可能性は十分にあります。

また、いるはずだった人が一人欠席しただけでも、その場の 空気は変わりますし、

あなたの順番が来る前に、だれかが同じよう なコメントをしてしまうことだってあります。

思った以上にあがっ てしまい、暗記した内容がすべて吹っ飛んでしまうなどという事態 も大いにありがちです。

結婚式のスピーチで頭が真っ白になって絶 句してしまう人、見たことありませんか。

いい話をしたい気持ちは わかりますが、前日の夜中に書いた文章を一言一句たがわずに覚え て話そうとするから、

一瞬、言葉が詰まっただけで対応できなくなってしまうのです。

短いコメントなら、なおさらです。

スピーチの ように言いっぱなしではなく、相手からの予期せぬ質問や反応があ りうる双方向の対話なのですから。

つまり、用意すればするほど「想 定外」のリスクを背負う確率が高くなるということなのです。

そん なリスクから解き放たれただけでも、あなたは自由。

少々言葉をつ っかえたり言い間違えたりしても、そのほうが人間的で好感がもて るというものです。

立て板に水のごとくベラベラ話す人の言葉より、 「よし聞いてやろう」と相手の心を引きつけることができるのです。

総合的なコメント力アップです。

<コンセプトさえ決めておけばスラスラ言える>

では、事前に用意もせずに、いったいどうしたら良いコメントが言 えるというのでしょうか。

最大のコツは、コメントのコンセプトだ けを決めておくことです。

1 つの大きなコンセプトさえ決めて、それ を確固たる背骨に据えてさえおけば、

あとの発言は自然に出てくる と言ってもいい。

どんな角度から突っ込まれても、つねにブレずに 即答することができるのです。

もっとわかりやすい例では、ものま ねタレントさんの芸のようなものと言ってもいいかもしれません。

「○○さんになりきる」 というコンセプトを決めるだけで、いか にもその人が言いそうな台詞がどんどん口をつく。

もちろん、その 人の口癖や有名な発言は身についているわけですが、それも含めて、

ものまねする対象のコンセプトさえ盤石なら、どんなシチュエーシ ョンを設定されても、

その人になりきったまましゃべりつづけられ るのです。

このノウハウを使えば、コメントするのがラクになると 思いませんか。

もちろん、特定の人物になりきるということではあ りません。

あなたの思考回路をコンセプトと同期させるのです。

た とえば、ヒット商品の開発にかかわったあなたに、雑誌のインタビ ュー依頼があったとします。

何を質問されるのか、不安です。

そこ で、あなたはその日のコンセプトを決めました。

「シンプル」です。

決めたら、あとはもう「あれを聞かれたら、どう答えよう」「答え に詰まったら、どうしよう」などと

細かいことを考えるのはやめに しました。

すると、本番のインタビューでは、じつにスラスラと言 葉が出てきたのです。

たとえば、こんな調子です。

「開発のきっかけは?」→「今あるものを、いかにシンプルに使いやすくするかを考えたところからスタートしました」

・・・「開発のご苦労は?」→「性能を落とさず、どこまでシンプルな構造をつくれるかです」

・・・「成功の要因は?」→「それは単純です。

た った1日も研究を休まなかったことです」と。

どんな質問に対して も、決めていたコンセプトの 「シンプル」 に引き寄せて考えただ け。

これをするだけで、思いのほか言いたいことが相手にストレー トに伝わり、

全体としても一本筋の通ったコメントになると思いま す。

まずは大きなコンセプトありき。

ところが、多くの人はベクト ルが逆なのです。

「ここでこう言う、次はこれ」と細部から入って しまう。

これが失敗の原因です。

・・・さあ、『心に刺さるコメン ト術』、実践してみましょう!