338[ 「感情」を使う仕事につく人の「心」の守り方 ]

[ 「感情」を使う仕事につく人の「心」の守り方 ]

たとえばサービス業や営業職のかたは苦手なお客様にも常に、にこ やかに対応することが求められます。

苦情の対応に追われるコール センターでは、怒鳴り声にもやさしい声で受容的に対応することが 求められます。

教師や保育士もまたしかり。

常に「先生」として適 切な言葉・表情・態度で子どもたちに接することが求められる仕事 です。

また、看護師やカウンセラー・ケアワーカーは、専門家とし て患者や利用者に感情を使って安心を与える仕事です。

このように、 「人相手」の仕事につくかたの多くが、「決められた感情」の管理を 求められ、

こうした規範的な感情を商品価値として提供する仕事を <仕事に熱心なあまり、

燃えつきてしまう人も>:あんなに 好きだった仕事が急に嫌になってしまう

・・・感情労働は、とても ストレスフルな仕事です。

不快なこと、失礼なことを言われたら、

◎あなたの仕事は、「決められた感情」で人に接する ことを求められる仕事ですか? 日々なされておられます。

表現として「感情労働」といいます。

「肉 体労働」や「頭脳労働」は昔からよく知られる言葉ですが、「感情労 働」は近年注目されてきた新しい概念です。

つい嫌な気持ちが顔に出てしまうのが人情ですが、感情労働におい ては、

個人的な感情を仕事に反映させないように、セーブすること が求められます。

個人的な感情を表に出さずに、どんな相手にでも 同じように接することが求められたりします。

こうした仕事の顔は、 プライベートの場でも求められることがあります。

休日でも、「先生 なんですね」と言われれば、それらしく行動しなければと感じたり、

「看護師だから親切でいなくては」・「ケアワーカーだから優しくな ければ」というように、

周囲も本人も、仕事の顔は実際の本人と裏 表なく一致しているべきだと、考えやすいものです。

そのため、感 情労働につくかたは精神的に消耗しやすいのです。

とくに、使命感 がとても強く、ひたむきな気持ちで仕事をしている人ほど、

突然ポ キッと心が折れてしまうような虚無感に襲われることがあります。

これを「バーンアウト」(燃えつき症候群)と言います。

バーンアウトに陥ると、突然仕事にやりがいを見いだせなくなり、

人が変わったように冷淡な対応をするようになったりします。

これ は、いつも決められた感情で仕事をしなければと頑張りすぎて、情 緒が消耗してしまった結果です。

「こうあらねばらない」という仕事 上の「ペルソナ」(仮面)に縛られすぎてしまうかたほど、

バーンア ウトするリスクを抱えているのです。

<バーンアウトを防ぐには?>

:限界を知り、オン・オフの切 り替えができるかたはストレスに強い とはいえ、感情労働は、やりがいのある仕事です。

洗練された笑顔 は人を幸せな気持ちにさせますし、真摯な対応は受け手を安心させ、 生きる力を与えることができます。

そのような仕事にやりがいを持 つかたのなかには、仕事と個人を分けて考えることができず、

仕事 にのめり込んでいくかたが少なくありません。

当面はやりがいと使 命感で高揚し、仕事に邁進できても、休みなくその状態を続けます と、

その結果、 出勤することもできなくなり、好きな仕事をあきらめてしまうかた もいらっしゃいます。

そのため、感情労働につくかたは仕事にかけ る思いと同じくらい、

仕事に打ち込む時間や気持ちの込め方に制限 をかけることも意識し、オンとオフのメリハリをつける必要がある のです。

たとえば、「ここまでは頑張るけれど、ここから先はできな い」という限界を知っておくこともその一つ。

限界を理解すれば、 仕事の物理的な負担、精神的な負担を 1 人で抱え込むリスクを減ら すことができます。

また、仕事中は気持ちを込めて対応しても、仕 事が終わったら意識を切り替えて、自分の時間を守ること。

「あのこ とはまた明日、仕事中に考えればいい」というように、ある程度割 り切って考えることが必要になることもあります。

また、休日には 勉強会や研修会など、自己研鑽にばかり時間を費やすのではなく、

趣味や気晴らし、ムダ話の時間も大事にすることです。

<「仕事の私」のイメージは私の全部ではない>

:プライベ ートでも、仕事のペルソナに縛られたままではありませんか?また、

仕事では「清楚なお姉さん」・「白衣の天使」・「みんなのお母さん」 といった理想的なペルソナがつきまとっていても、

そのイメージが 必ずしも「自分自身」であるわけではありません。

わがままな顔や 冷酷な顔、なまけ者の顔、したたかな顔など、色々な側面を持って いるのが人間です。

期待される職業上のイメージと自分自身を一体 化させねばならないと頑張ってしまうかたほど、

職業上のペルソナ に合わない自分自身の「負の側面」が許せなくなってしまうもので す。

すると、「私は○○のプロなのだから、いつでも○○でなければ ならない」という思い込みが自分を縛り、

追いつめてしまいます。

感情労働を選ぶかたの多くは、人間が大好きで、感情が豊かなかた と思います。

それだけに、いつも笑顔で懸命に人に尽くしてしまい、 知らず知らずのうちに疲れを溜めてしまうのでしょう。

仕事は長く続けていくことに意味があります。

せっかく選んだ適職 をバーンアウトで失わないように、また労働の価値である感情を守 るためにも、

仕事とプライベートとの時間的な切り分けをし、「プロ はこうあらねばならない」

という職業上のペルソナにこだわりすぎ ないことも必要なテクニックになってきます。

・・・感情労働にや りがいを覚えているかたほど、上述の内容を意識していく 必要があるのだと思います。