[ 思考のワナ ]
◎多くの人が陥りやすい“思考のワナ”というものがあり ます。
それは、自らの経験でつかんだ価値観などを「正しい」と思い込む ことです。
その価値観の中には、事実もあるのかもしれませんが、 明らかに説得力に欠けるものもあります。
特に仕事の場の中では、 「学歴」・「業界」・「会社」・「仕事」・「将来」などにおいて
“思考の ワナ”に陥りやすいのです。
この“ワナ”を知っておきますと、上 司や同僚、取引先などと話をする時に役に立つことが多いものです。
ぜひ、参考にして頂ければと思います。
<1.学歴のワナ>
「学歴」をテーマに、会社員や経営者、自営業の人などの取材をし てきましたが、確信することがあります。
それは、高学歴(難易度 の高い大学の卒業者)の人ほど、高学歴だと会社の中で活躍し、
同 世代の中で早く昇格していくものだと思い込んでいる人が多いとい うことです。
中には、「そこそこの学歴の人(難易度の低い大学の卒 業者)は、自分より上に昇格することはできない!」
とまで、言い 切る人もいらっしゃいます。
取材をしておりますと、実際のところ は高学歴だったとしても、昇格で伸び悩む人は多く、
私の上司のか たがたもそのタイプでした。
ところが、この現実を受けとめられな い人はたくさんいらっしゃいます。
「高学歴なのに、出世が遅い人は トラブルメーカーだから」と答える人もおられます。
ですが、私の 上司のかたがたは、トラブルメーカーではありませんでした。
自分 が大切にしている価値観を否定されたくなかったのではと思います。
<2.業界のワナ>
企業を取材しておりますと、時々、疑問に感じることがあります。
それは、会社員は自分が働いている業界以外のことにあまり関心が ないということです。
逆に、自分が働く業界のことを必要以上に悲 観的にとらえたり、極端なほどに楽観的にみる傾向があるのです。
例えば以前、大手スーパーの店長が「出版界はいつまでたっても不 況知らず。
みんなが殿様商売。
倒産する会社は少ない。
うらやまし い。
うちの業界はどんどんと合併が進んでいる。
大変ですよ」と話 してました。
しかし、出版社や編集プロダクションで倒産したり、 買収されたりしている会社は多く、
とても「不況知らず」とは思え にくいのですが、これも多くの人が陥る「思考のワナ」です。
長い 間、同じ業界にいると、自分のいる業界こそ、最も過酷で、厳しく、
他の業界は「それほど深刻な状態ではない」と思い込む傾向がある のです。
他の業界の企業や人と接する時、この“ワナ”を心得てお きますと、トラブルを回避することができます。
<3.会社のワナ>
会社についても「思考のワナ」に陥っている会社員は多いのです。
例えば、「うちの会社の営業は大変だよ」・「うちの会社は、景気の影 響を受けて深刻な状況だ」
といった言い分などがあてはまります。
いずれも事実かもしれませんが、不況の時期は「景気の影響を受け て、深刻」であることは
多くの会社にいえることです。
実は、もっ と深刻な経営状態の会社があるはずですが、そこまで視野を広げる ことができていません。
給与や賞与、労働時間、人事異動などにお いても会社員は、
えてして現在、勤務している会社のことを実態よ り悪くみたり、
あるいは良くとらえる傾向があるということを忘れ ないことが大切です。
<4.仕事のワナ>
自分が担当する仕事についても、「思考のワナ」に陥っている人が多 いのです。
私が知っている雑誌編集者の 3 人に 1 人は「書籍(本作 り)の仕事は、雑誌に比べて作業がラクだ」と話してます。
一方で、 書籍の編集者には「本作りのほうが、雑誌よりも厳しい」と説明す る人もいらっしゃいます。
双方の言い分は、全く異なってます。
ど ちらの主張も事実関係として正しいのかもしれませんが、誤りもあ るように思えます。
多くの人は、自分の仕事こそが大変だと思い込 むものです。
これも「思考のワナ」であるということを心得ておき ましょう。
<5.将来のワナ>
上記 1〜4 までの「思考のワナ」に陥りますと、自分の将来について も、おのずと誤った認識になりがちです。
私が取材で接する会社員 の中には「うちの会社には明るい将来がない」と思い込んでいる人 がいらっしゃいます。
特に、30 代半ば以降になると、そう信じ込ん でいる人が増えてきます。
私にはそこまで言いきる根拠がないよう に思えますが、本人はそう信じ込んでます。
一方で、人事異動にな った時、それを「出世」と思い込む人もいらっしゃいます。
その世 代なら平均的なペースの昇格なのかもしれませんが、本人は「出世 グループ」にいると信じ込んでます。
これらは、いずれも自分が経 験してきたことを過小評価したり、過大評価したりすることで生じ る“ワナ”なのです。
・・・今回ご紹介させて頂きましたこと以外に も、人々が陥る「思考のワナ」はあります。
人は、えてして自分が 経験してつかんだ価値観やとらえ方を「正しい」ものだと思い込む 傾向があります。
このあたりのことをよく心得て、周囲のかたと接 しないと反感を買うことも増えていきます。
仕事を難なくこなして いくためにも、頭の片隅においてほしいことの一つです。
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