361[ 感情とは ] ◎感情を読み取る。より良い人間関係。

361[ 感情とは ]
◎感情を読み取る。より良い人間関係。

心穏やかに。

感情とは、ヒトなどの動物がものごとや対象に対して抱く気持ちの こと。

喜び・悲しみ・怒り・諦め・驚き・嫌悪・恐怖などがありま す。

研究者は、「人の本当の感情は、15 分の 1 秒にも満たない一瞬 の表情に表れておりますが、

90%の人は、この微細な表情に気づか ずに、相手の気持ちを読み取れずにおります。」と強調されます。

思わず不快な表情をしたとして、理性修正に 0.2~0.5 秒かかるそ うです。

また、その 0.2~0.5 秒の本音を見ているのが「空気を読 む」という作業だそうです。

人は無意識に相対する人の表情を見て います。

精神医学・心理学では感情と気分を区別することがありま して、前者の方がより一時的なものをさします。

脳科学的には、感 情は大脳の表面(大脳皮質)と脳の深部(辺縁系など)と身体の密 接な相互作用で成り立っています。

また感情と思考や認知は、たと えその人が意識にのぼらせなくても密接に関係し合っております。

一般に人間(ヒト)は感情を抱きますが、ヒト以外の哺乳類も、大 脳辺縁系の構造はヒトと類似していて、

辺縁系各部位に対する電気 刺激や神経作用物質の投与によりまして、

不安・恐怖・怒りなどヒ トの情動反応に類似した反応をみせることが古くから知られていま す。

従いまして、これらの動物にも感情(情動)があると推測され ます。

ただし、比較認知科学的には研究が始まったばかりで、

あく までも刺激と行動の相関関係が観測されているだけにすぎない、

と する主張されるかたもいらっしゃいます。

・・・生活文化において は、単に「情」と略する事があります。

他人の感情を深くくみ取り (感受性が高い)、

場合によってはそれに伴った感情を態度(涙を 流すなど)や行動に表すほどに

心が豊かな事を「情に厚い」と表現 されます。

「情に厚い江戸っ子気質」などの語句に使われて、江戸 っ子の粋の一つともされています。

・・・生物学的には感情は大き く四つの要因に分ける事ができます。

(1)感情を引き起こす脳科 学的メカニズム、

(2)感情の社会的メカニズム、

(3)個人の感情 を形作る感情の個体発達、

(4)種に普遍的な感情を形作った進化 的機能です。

前二者は至近要因、後二者は究極要因と呼ばれます。

生理学的には、感情は身体感覚に関連した無意識な感情(情動)と 意識的な感情(フィーリング)とに分類されます。

意識的感情(フ ィーリング)には、大脳皮質(大脳の表面)とりわけ帯状回、前頭 葉が関与しています。

無意識感情には、皮質下(脳の中心の方)の 扁桃体、視床下部、脳幹に加えて、

自律神経系、内分泌系、骨格筋 などの末梢系(脳の外の組織)が関与します。

たとえば私達が恐怖 を感じるとき、脈がはやくなり、口が渇き、手に汗を握るのを感じ ます。

恐怖を感じているのは皮質であり、末梢の反応(動悸など) を起こすのは皮質下です。

感情について考えるとき、両者を切り離 して考えることはできません。

感情を体験・認識することは、刺激 に対して発生した身体反応を説明するために

皮質が作るストーリー であると主張するかたもいらっしゃいます。

例えば、被験者にアド レナリンを注射した後で不快な環境に置いたところ、

アドレナリン の副作用を知らされていない被験者は、

アドレナリンにより起こっ た動悸や冷や汗などの反応を環境のせいにして不快がりますが、

副 作用を知らせておいた被験者はアドレナリンのせいだと判断して、 不快さは少ない。

つまり皮質が、身体の反応を、前後の文脈と照ら し合わせて解釈し感情という

ストーリーを作ったということになり ます。

ですが意識に関して、どこでどのように感情意識が発生して いるか、という点については、

いまだ諸説あり、詳細は不明ですが 次の研究結果があります。

1「胸が痛む」・「断腸の思い」・「血 湧き肉躍る」・「手に汗握る」

・「胸をおどらせる」・「腹が立 つ」・「はらわたが煮えくり返る」

・「頭に血が上る」・「むかつ く」・「苦々しい」などは、典型的な交感神経亢進反応で、

幾つか はそれらに起因するかもしれない消化管症状です。

このように、身 体と感情の密接なつながりは、感情に関係する日常的な言葉にもよ くみられるのです。

2精神疾患の治療に用いられる認知行動療法は 「認知の仕方を変えることによって感情を調整する」という

理論に 基づいていて、皮質と皮質下の相互作用を応用した好例と言えます また、

自律訓練法は「手が暖かい」・「気持ちが落ち着いている」 など、

リラックスした身体状態をイメージしながら心身の緊張をと る訓練法で、

ストレス解消・心身症・神経症などの治療に用いられ ます。

これも末梢の自律神経反応と感情の相互作用を応用した例で す。

・・・以前、脳神経外科の世界的権威者は「死後の世界は存在 する」と発言しました。

かつては一元論者で死後の世界を否定して いた人物でしたが、

脳の病に侵され入院中に臨死体験を経験して回 復し退院後、

体験中の脳の状態を徹底的に調査した結果、昏睡状態 にあった 7 日間、

脳の大部分は機能を停止していたことを確認しま した。

そしてあらゆる可能性を検討した結果、「あれは死後の世界 、 。

に間違いない」と判断して、自分の体験から「脳それ自体は意識を 作り出さないのでは?」

との仮説を立てています。

また、幼い赤ち ゃんでも生後数日で母親の表情に反応するようになります。

宙に浮 いた物体を見せますと長く見つめるなど、何らかの感情を持ってい ると考えられます。

私達の主要な感情は 4 歳頃までには形成されま す。

人は生まれてから死ぬまでに様々な感情反応を示しま す。

・・・進化心理学では、感情の仕組みは、環境に応じて素早く 行動を決定するための生物学的適応であり、

進化の過程で形成され たと考えられます。

進化心理学者は親族間の愛情は血縁選択によっ て、親子間、夫婦間の愛情と反目は親子の対立、

性的対立の要因に よって進化したと考えています。

また、それぞれの感情が異なる選 択圧によって形成されて、異なる機能を持って、

異なる神経的基盤 あるいはモジュールを持つと考えています。

進化生物学者とゲーム 理論家は、友情・協力・裏切り・罪悪感・公平さ・道徳観などを

引 き起こす動機として一部の感情が進化して、それは互恵的利他主義 と間接互恵性、

一般互酬性の理論から導きだせると考えています。

このような視点からは、感情は生まれながら持っているものであり

内外の刺激に対して瞬時に自律的に発動すると考えられています。

・・・人間にはどのような感情があるのかについては古来様々 に議論されてきました。

以下に、歴史的文化的経緯、感情研究の歴 史に基づく分類を示します。

1六情:6 種類の代表的な感情として 喜・怒・哀・楽・愛・憎

2三字経:喜・怒・哀・懼 (おそれ)・ 愛 (いとしみ)・悪 (にくしみ)・欲の七情が人にそなわっていると 言います。

3五情(ごじょう):喜・怒・哀・楽・愛と、人間の持 つ代表的な感情を五つにまとめて表します。

・・・また、「心」で 感情を表す漢字は、

忌 (いむ) ・忍 (しのぶ) ・怒 (いかる) ・恐 (おそれる) ・恥 (はじらう)

・恋 (こい) ・悲 (かなしい) ・愁 (うれえる) ・慕 (したう) ・憂 (うれえる)

・怪 (あやしむ) ・ 怖 (こわい) ・悔 (くやむ) ・恨 (うらむ) ・惜 (おしむ)

・悼 (いたむ) ・愉 (たのしむ) ・憎 (にくむ) ・憤 (いきどおる) ・ 懐 (なつかしむ) 等々。

・・・感情を表す形容詞および形容動詞 (例:かなしい) 、

その感情をいだいている/いだく動作を表す動詞 (例:かなしむ) 、抽象化された名詞 (例:かなしみ) を示します。

種類としまして、

1形容詞および形容動詞:かなしい・うらがなし い

・ものがなしい・みじめだ・やるせない・たのしい・うれしい

・ しあわせだ・めでたい・いまわしい・はずかしい・うらめしい

・にくたらしい・いやだ・きらいだ・さわやかだ・いつくしい

・いとお しい・つまらない・おそろしい・こわい

2動詞:このむ・よろこ ぶ・いかる・おこる・かなしむ・おそれる

・はじらう・はにかむ・ うれえる・あやしむ・うらむ・にくむ

・いきどおる・むかつく・き らう・けぎらいする・めでる・うんざりする・あきる・びびる

3名 詞:よろこび・かなしみ・いかり・うらみ・・・

インドには、伝統 的な美学理論(人間の 9 つの基本的感情) というものがあり、

それ は、シュリンガーラ (恋愛感情:恋する気持ち、愛する気持ち)

・ ハースヤ (滑稽な笑い)・カルナ (悲しみ)・ラウドラ (怒り)

・ヴ ィーラ (勇ましい気持ち、活力あふれる気持ち)・バヤーナカ (恐 れ)

・ビーバッサ (嫌悪)・アドブタ (驚き・驚愕)・シャーンタ (平和)の 9 つであるとされます。

・・・チャールズ・ダーウィンは 悲しみ、幸福、怒り、軽蔑、嫌悪、恐怖、驚きという

七つの基本的 感情が、文化によって異ならず、普遍的に同じ方法で表現されると 考えます。

また子供の成長やオランウータンの感情表現の観察を通 して、

人間と他の霊長類の類似性を見い出しました・・・

表情は自 律的に働き、訓練しないと意識的にコントロールできません。

また どの文化でも基本的な表情は共通しています。

感情・気分が冒され 、 、 る疾患の代表的なものは気分障害(躁うつ病)です。

うつ病では抑 うつ気分(落ち込んだ・疲れた・元気のない・悲しい・泣きたいよ うな

・嫌になる・死にたい、絶望的)を呈しますが、躁状態では気 分が爽快になり、

元気で、活気にあふれている、自信満々、動き回 りたいなどの気分を呈します。

重症になりますと攻撃的な気分、怒 りが前面に出てきます。

ですが抑うつ気分を呈する疾患はうつ病だ けではありません。

適応障害・統合失調症・摂食障害・パーソナリ ティ障害など様々な疾患に合併することがあります。

また、精神疾 患に限らず、健康な人でも一時的に抑うつ的になることはよくあり ます。

・・・感情に作用する薬物:1抗うつ薬:抗うつ薬はうつ病 うつ状態の治療薬で、

落ち込んだ気分、意欲低下などを改善します セロトニン系、ノルアドレナリン系、

ドーパミン系神経を活発化す ることで効果が現れます。

抗うつ薬によってその

3 系統の神経系へ の働きの強さが異なり、薬剤ごとに薬効が異なります。

2抗不安 薬:ベンゾジアゼピン受容体に働くことで、不安を取り除く作用が あります。

3違法な薬物である覚醒剤は、脳のドーパミン系を強く 興奮させることで快の気分が発現れます。

同時にドーパミン系神経 の異常を来たし、様々な副作用・後遺症を来たします。

他にも、アルコール、ステロイドなど様々な薬物が感情に作用します。

・・・ 感情を分析する: 典型的な顔の動きとしては、鼻にしわを寄せる、上唇を上げる、

も しくはその両者の特徴が合わさったものです。

「嫌悪」とは、反 感・拒否・嫌気などを含む否定的な感情のことを言います。

「嫌 悪」の表情のルーツは不快な匂いの経路を遮断する(鼻の穴をふさ ぐ)アクションだと言われています。

ですが、「嫌悪」は嫌な匂い の遮断という物理的な現象に対してだけでなく、

嫌いな相手や気に 食わない言動に対しても表れます。

進化生物学的には、「嫌悪」の 表情は食物が腐っていることを周りの仲間に示すサインです。

「嫌 悪」を示す他のボディー・ランゲージとしては、顔・身体を対象か ら背ける動作などが挙げられます。

表情は他者とコミュニケーショ ンをはかるうえで重要な社会的信号です。

感情と表情に関する研究 をいち早く行ったグループは、西洋文化圏から隔絶された文化圏の 人々が、

西洋文化圏の人の表出する表情の意図を読み取ることがで きること、

そしてその表出する表情もまた西洋文化圏で表出される 表情と共通であることを見出すなど、

多様な文化における表情研究 に基づいて、基本的な

6 つの感情(怒り・嫌悪・恐怖・喜び・悲し 「嫌悪」表情の特徴は、「鼻の周りのしわ」です。

み・驚き)を表す普遍的な表情があるという理論を提案しました。

この理論は世界的に普及して、多くの表情研究がそのような普遍的 な表情があることを前提として行われています。

また、近年の研究 で西洋文化圏と東洋文化圏では表情の表出に違いがあることや、

顔 の筋肉について解剖学的・運動学的な違いがあることが示されてお ります。

・・・日本人の表情を実証的に調べた結果、感情の強さや 表情に係る顔の

筋肉の動きのパターンが異なっていることがわかり ました。

総合的な判定として、日本人は上記の典型的な基本 6 表情 を表すにも関わらず、

実際の場面では典型的な表情とは異なる表情 を表すことがわかりました。

そして、表情が示す感情の種類やその 強度、表情に係る顔の特定の筋肉の動きは、

決して一定ではないこ とがわかりました。

・・・私たちは、生きていく中で、出会う 人の「感情の種類」を察して、より良い関係を築いていき たいものです。

争うことなく、心穏やかに。