『ピグマリオン効果の実践』

『ピグマリオン効果の実践』

◎ピグマリオン効果:「人間は期待されたとおりの成果を出す傾向がある」

やる気を引き出すために、どのような言葉を投げかけますか? 

「君たちは選ばれた利口な集団だ」と言われた生徒のほうが、そうでない生徒よりも

倍の成果を出した実験結果があるように適度な期待をかけられた人は、

やる気を起こすものなのです。

 ここではっきりさせておきたいことは、“期待”と“プレッシャー”は違うということです。

時には厳しい言葉も必要ではありますが、悪気はないにせよ過剰な期待は

プレッシャー化してしまい成果の支障になってしまいます。

 では、やる気にさせる励まし方とはどのような言葉なのでしょうか? 

 さて、ここに「部下をやる気にさせるのがうまい!」と職場で絶賛されている“期待上司”と、

「あの人がいるだけでモチベーションが下がってくる」と批判の嵐の“プレッシャー上司”がいます。

● プレッシャー上司:「どうした? 」

○ 部下:「課長……。このままだと目標の数字を達成できません」

● プレッシャー上司:「達成できない? ! (ため息)気が緩んでいるんじゃないか?

 (ため息×2) 営業三課の高橋君も残り1カ月で見事に挽回したから、君もできるよな?

 (ため息×3)」

○ 部下:「……はい…」

 出ました!  「できないのは気の緩み」という決めつけと、「適当な他人との比較」。

他者との比較はイタズラにプレッシャーを与えるだけです(そして“ため息”つき過ぎです)。

☆ 期待上司:「どうした?」

○ 部下:「課長……。このままだと目標の数字を達成できません」

☆ 期待上司:「そうか、それは深刻な問題だ。目標達成に近づくためには、

まず何ができている必要がある? 一緒に考えてみよう(続く)」

 いかがでしょう。期待上司は具体的に目標に近づくための方法を一緒に考え、

実行が容易な小さな目標をひとつずつ積み上げていき、何のためにそれをするのか

(目的意識)を明確にするような話し合いの場を必ず持っています。

何よりも、部下の落ち込む気持ちに伴走して、だからこそ解決しようとしています。

この例からだけでも“プレッシャー”と“期待”が明らかに違うことがわかりますね。

プレッシャーを与えるだけでは部下は余計に落ち込み空回りが加速するだけなのです。

 おや? こちらの職場でも緊迫ムードの上司と部下がいるようですが? 

○ 部下:「あの課長」

● プレッシャー上司:「なに? 」

○ 部下「私にはこの目標の数字は少し高すぎるように思えるのですが……」

● プレッシャー上司:「あのさ、何甘えているんだよ! 俺の時代ではそんなの当然だったよ

。バーンっ! (机をたたく) そもそも俺の時代はさ……」

 ああ、またか、と職場中に響き渡る罵声と武勇伝の羅列! このように

「感情で怒られる」のは理不尽だと思う人は多いものです。

ではこのような相談に来た部下にはどのように“期待”の言葉をかければ良いのでしょうか? 

○ 部下:「あの課長」

☆ 期待上司:「なに? 」

○ 部下「私にはこの目標の数字は少し高すぎるように思えるのですが……」

☆ 期待上司:「具体的にどういったことが不安なのか話してくれるか? 」

○ 部下:「はい。今までこんな高い目標なんて達成した経験がないので、

できるイメージが湧かないのです。期限もないし…」

☆ 期待上司:「なるほど。ではどんなことがクリアになったら前に進めそうかな? 」

○ 部下:「実は……(続く)」

☆ 期待上司「そうか。そう焦るな。君のようにできるメンバーは、今までの仕事よりもより

高い目標に挑戦していくからこそさらに伸びるんだよ。

一緒に考えるから何とか進んでいこうよ! (続く)」

☆ 「焦るな」という一言が効きます! 

 さすがは期待上司です。「できない理由を一方的に責める」のではなく、

どのような“こと”が不安なのか? という言葉を使っている点、

“出来事”にフォーカスするような聞き方をすれば、仕事のプロセスや中身の現状に目が向き、

問題点への理解や対処方法が明らかになるというわけです。さらに「焦るな」という一言を

掛けることで、頑張りすぎてしまう部下に「あなたらしく成果を出せばいい」と

救いの手を差し伸べているのです。

 また業務の円滑化アンケート調査の結果、こんなコメントもあります。

 「褒められるとうれしい! 気にかけてくれると、この人のために200%頑張ろうと思える」

 そうなのです。誰だって“頑張ってるときにモチベーションを上げてくれる言葉が欲しい。

”シンプルだけど、そう思っているのです。もし部下に対して「褒める点なんてない! 」と

嘆くことがあっても、ぜひ褒められる点を探してみてください。

部下の長所を発見するのも上司の役目ですから。

 人は何かに取り組むとき、褒められたほうがより記憶に定着し効果的に結果を出せることを、数々の研究チームが科学的に証明しています。「褒められる」ことは

、脳にとっても社会的な報酬になり、やる気につながるのです。

そう、「褒めて伸ばす」は科学的にも証明されているのです。

 もちろん褒めすぎは、人を調子に乗せるという危険もあります。そしてしかりすぎは、

人格を否定し自信を失わせます。放送番組では、とある飲食店での売り上げ向上のため

に行われた覆面調査が取り上げられており、そこでは私たちの心を動かす黄金比率として

「褒める:しかる=5:1」とありました。褒める分量が足りていないかもと気になったあなたは、

この比率を意識してみてはいかがでしょうか。

 まとめをさせて頂きます。“期待上司”にはどのような共通点があるのでしょうか?それは、

 ☆ 部下のよい部分を見つけて、積極的に褒める(褒め上手である)。

 ☆ 間違いを正すときは、冷静に淡々と具体的に指示をし、その後フォローがある

(感情をむき出しにしない)。

 ☆ 自分に非がある場合は素直に認める(誠実である)。

 ピグマリオン効果の提唱者も、「人はつねに相手の期待に対し最も敏感に反応する」と

言っています。常日頃から部下に期待していることを伝え、

そしてそれを聞いて部下が行動する。その結果、顧客が喜び、チームがさらに活性化する。

それだけにはとどまらず、何より部下自身もより成長できている。

このポジティブな未来予想図を描けるかどうかこそ、“期待する”ということなのだと思います。

 もし、自分は日頃からプレッシャーを与えているのかな? と思い当たる方が

いらっしゃいましたら、是非この点を踏まえ接してあげてください。

そして結果としてチーム全体が笑顔で目標を達成していることを祈っております。

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