182 『あがり症を克服』

『あがり症を克服』

◎設定ハードルを下げる!・・・気持ちがとっても楽になる。

克服本の「場数を踏め」という言葉に、「それで治るならとっくに治っている」と

感じたことのある方もおられるでしょう。

では、どう付き合うのが得策でしょうか。ポイントを申し上げます。

<自分で勝手に設定したハードルを下げる>

あなたはひょっとして「うまくやろう」と思っていませんか?考え方を改め、

行動パターンを変えることで、あがり症の自分と向き合うことができます。

無意識のうちに100点満点を目指そうとして、余計にあがってしまうのです。

ですからまず、自分で勝手に高く設定してしまったハードルを下げて、

うまくやろうという気持ちは捨てましょう。

そのうえで、自分の目的が何であるかをしっかり見定め、それを達成することだけを考えればいいのです。

例えば、「あがり症」のあなたが営業職の場合、目的は営業成績を上げることです。

立て板に水のトークで、顧客に商品の魅力をうまく説明したり、

面白い話で笑わせたりすることではありません。伝え方や話し方、声の大きさといった

表現方法が気になってしまいがちですが、それを気にしすぎて相手に肝心の内容がうまく伝わらなければ、

本末転倒です。

目的を見極め、それを達成するには、あがり症である自分をしっかりと自覚しておき、

いかにあがらず持ち味を発揮できる場をつくれるかにかかっています。

最初から勝てそうでなければ、勝負に臨まなければ決して負けることがないように、

あえて苦手な部分にはタッチしない、勝てそうな勝負だけに臨むことが大切です。

<相手にとって身近な話題を集めておく>

初めての顧客のもとを訪れる場合、ポイントは、約束の時間より早めに取引先に向かうことです。

時間ギリギリに到着して、焦ってあがってしまうのを避けるという意味もありますが、

しておきたいのは顧客と対面した際の会話のネタ収集です。

最寄り駅に着いたら、目的地まで歩きながら話題になりそうなものを探します。

行列ができているスイーツのお店や、変わったメニューのあるカフェがあったらしめたもの。

顧客と対面した際、「あのケーキ屋の行列はすごいですね」・「ビル1階のカフェに寄ったら、

○○というメニューがあったので、思わず頼んじゃいましたよ」など、

話の糸口をつかむ話題が集められます。

次はいざ、顧客と対面。初対面の場合、名刺交換で先方のフルネームを読み上げることです。

そこで間違えてしまっても、緊張がほぐれますし、たとえ読み間違えたとしても

「珍しい苗字で……、どちらのご出身なのですか」などと、そこから会話が生まれます。

これらのネタ収集の共通点は「相手にとって近い情報である」ということです。

誰しも身近なことなら話しやすいもの。相手が話してくれれば、緊張も和らぎ、

その後の商談も進めやすくなるでしょう。もし用意したネタが1つ外れても、

3つぐらいストックがあれば万全。

精神的なゆとりにもつながり、あがらないで済みます。ネタ収集のために到着が早すぎたとしても、

準備の時間を取れたという意味で決して無駄にはなりません。

それがまた、1つの話題にもなります。一見無駄なその時間を惜しまないことで、

話題を何も用意できずにあがって失敗してしまうより、結果的に、物事を効率よく進められます。

<自分は話さない、相手に話してもらう>

商談に入った際のポイントは、トークが得意でないのなら、

なるべく自分が話さないで済むようにすることです。方法は大きく分けて2つあります。

「話す以外の方法で伝えること」と、「相手に話してもらうこと」です。

話す以外の方法とは、例えば資料や写真、現物を見て頂きます。

視覚にも訴えられますので、あがってしどろもどろな説明をするより、

よほど相手に伝わりやすいのです。

さらに、話す機会を減らした分、そのとき必ず伝えたいことに力を注げるというメリットもあります。

とはいっても、どうしても自分主導で話さなければならない場合もあります。

そのときはなるべく会話に持ち込んでしまいましょう。

会話なら、単純に話す量が1人のときの半分で済みますし、流れに乗れますので、

自分で話を展開し続けるより、あがり症を意識しにくくなります。

相手に話してもらうよう仕向ける作戦は、自分より目上の人と接するときにも大いに活用できます。

例えば、さほど接点のない上司と出かける車中。いきなり読書を始めたり、

眠ったりするわけにもいきません。

そんな場合、「私は○年目なのですが、部長の○年目はどんな感じだったのですか? 」などと

質問するのが効果的です。

その際、質問は現在のことよりも過去のことから聞き始めたほうが、相手も話しやすくなり、

会話がいっそう弾みます。目上の人や年長者には、当人の昔の話題に喜んで答えてくれる人が多いもの。

これは取引先の上役や、強面でとっつきにくそうな人と会話しなければならないときにも使えます。

<講演やスピーチでは味方を見つける>

あがり症の人が最も苦手とするのが、結婚式のスピーチや講演、大きな会議での発言ではないでしょうか。

大人数を相手に、しかも自分で話を切り出し、展開しなければならないときでも、

考え方は商談と同じです。

ポイントは「会話に持ち込む」・「伝えたいことだけは漏らさず伝える」の2点です。

スピーチ形式のような話し手と聞き手という関係でも、会話はできます。聞き手の中には、

あなたの話に大きくうなずいてくれる人がいます。その人に向かって語りかければいいのです。

スピーチ形式では、聞き手の反応が見えにくいため、不安があがりにつながりやすいのですが、

うなずいてくれる「味方」を見つけられれば、勇気100倍です。

講演をするとき、最初に自分があがり症だということをカミングアウトすることも有効です。

そうしておけば、ちょっと言葉を噛んだり、しどろもどろになったりしたとしても、

緊張することなく話せます。すると、話し方よりも「自分が伝えたいこと」に集中できて、

講演の目的を達成しやすくなるのです。

あがり症の人はとかく「あがり症を克服すればすべてうまくいく」と考えがちですが、

本気で克服しようとしたら、どれだけ時間がかかるでしょう。

むしろ、自分の体質だと割り切ってうまく付き合ったほうが得策です。

目的はあがらないことではなく、仕事の成果をあげることです。

「あがり症だけど仕事ができる人」、そんな人を目指しても良いのではないでしょうか。