208 『苦しい時に相談できる』

『苦しい時に相談できる』

◎つながり先確保!

誰にでも「苦しいとき」は訪れるはず。一人きりで考え込むと、最悪シナリオを描いてしまうかもしれません。

そんな危機から抜け出すための「つながり先」についてお伝えします

<「苦しいとき」は誰にでも訪れる >

複数の要因が重なりますと、生きるのも苦しくなります。

たとえば、返済ができないほどの借金を背負ってしまったとき

・過酷なプロジェクトを抱えて出口が見えなくなったとき・配偶者に先立たれ生活に困り果てたとき

……このような「苦しいとき」は、誰にでも訪れる可能性のあることです。

苦しさを一人きりで抱えると、最悪なことを考えてしまうものです。たとえば、自殺もその一つ。

わが国に「自殺者数3万人台」という数字が10年以上も続きましたのは、そもそも日本人の意識の中に、

「問題が起きたときに、他人に迷惑を掛けてはいけない」という強い思い込みがあるためではないでしょうか。

自殺により亡くなった1,000人の方のご遺族等を調査し、

その結果を分析した「自殺実態白書」(自殺対策支援センター ライフリンク)によりますと、

自殺者一人あたり、平均4つの自殺危機要因を抱えていたことが分かりました。

その危機要因全体のおよそ7割が、次の10の要因に集中していることも分かりました。

1. うつ病

2. 家族の不和(親子間・夫婦間・離婚の悩み・その他)

3. 負債(多重債務・連帯保証債務・住宅ローン・その他)

4. 身体疾患(腰痛・その他)

5. 生活苦(将来生活への不安)

6. 職場の人間関係(職場のいじめ)

7. 職場環境の変化(配置転換・昇進・降格・転職)

8. 失業(就職失敗)

9. 事業不振(倒産)

10. 過労

この調査では、こうした複数の危機要因(自殺者平均で4つ)が絡み合い、

自殺へと追い込まれていくと分析されています。

<追いつめられたとき、一人で答えを出すのが危険な訳 >

一人きりで出す答えは、合理的でないことが多い

また、「もう死ぬしかない」と考えるほど、苦しさに追いつめられているとき、

多くの場合には極端な信念から抜け出せない状態になっていると考えられます。

あくまでも一例ですが、配偶者を失って出口を見失う、ある妻の思いを例示してみましょう。

「配偶者を失った

「生活が苦しい、子どもの養育費が出せない

「自分の問題を人に頼ってはいけない

「貯金とパートでなんとか凌ぐしかない

「貯えが尽きたら、もう死ぬしかないのだろうか」・・・

このように「人に頼ってはいけない」という思いが、さらに「自分の力だけで切り抜けなければならない」

という信念を生み、困難な事態になると「人に迷惑をかけないためにも、死ぬしかない」と、

極端な信念に自分を追い込んでいくのではないでしょうか。

一人きりで考えていると、この信念が非常に強固になりやすく、抑うつ化も進んでしまいます。

そうなりますと、「少し目線を変えれば他の選択肢もある」ということが分からなくなってしまうのです。

このように追いつめられた苦しさから抜け出すために必要なこと。

それは、まず信頼でき、話を聴いてくれる人、そしてその問題に関する専門的な知識を持つ人や機関に

「つながること」ではないでしょうか。

<具体的な「つながり先」についてお伝え致します>

(1) 信頼でき、話を聴いてくれる人に「つながる」 

話すだけで苦しみが解けていくことも。「苦しいとき」には、とにかく自分の思いを話すことです。

前述致しましたように、一人きりで考えていると、考えが頑固な信念に向かいやすく、

他の方向性から物事を考えることができなくなります。

たとえ、話す相手が専門的な知識を持っていなかったとしても、

具体的なサポートを期待できないとしても、話を受け止めてもらえるだけで、

気持ちが楽になることはあるはずです。

親やきょうだい、親せき、友だち、上司など身近な人でもいいでしょう。

また、職場や学校の産業保健スタッフ、カウンセラー、保健センターや男女共同参画センター、

女性センター等に設置されている悩み相談所もいいでしょう。

また、同じ問題・病を持つ人やその家族の団体、自助グループ等の市民団体にアクセスして、

サポートを体験することも大きな変化につながると思います。

公的サービスの場合は、原則的に無料で利用できるところが多いですし、

自助グループ、サポート団体も利用しやすい金額で相談できるところが多いのです。

(2) 身近な専門機関に「つながる」 

問題解決に近づける相談機関はたくさんあります。しかし、話を受け止めてもらうだけでは、

問題解決へと向かわないことも多いはず。

そこで、具体的な問題を扱う専門家にもアクセスすることが大切です。

たとえば、借金の問題に関しては、各都道府県にある「消費生活センター」に

多重債務の相談窓口がありますし、返済方法や債務整理などの相談ができる、

公共の法的相談窓口もあります。

労働や雇用の問題に関しては、各都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」があります。

生活苦の問題に関しては、生活再建支援の窓口を設けている自治体もありますし

、最低限の生活が保障される生活保護を申請することもできます。

自殺予防総合対策センターのホームページの中には、各都道府県、

また広域の各種相談窓口の一覧がありますので、最寄りの相談窓口を探すのにとても便利です。

まずは、問題の解決に近づける相談窓口にアクセスしてみましょう。

ですが、現実問題と致しまして、専門窓口に相談しても、支援が思うように得られない

・解決へと向かわない場合も意外に多いものです。そんな場合には、

各問題を専門的に扱う市民団体や組合につながる、という方法がおすすめです。

よりたくさんの支援の情報が得られる可能性がありますし、市民目線、当事者目線での問題解決を

一緒に考え、アドバイスをもらえることも多いものです。

現代の「いのちづな」、それは、「苦しいとき」にこそ、話を聴いてくれる人や

専門的な機関とつながることではないでしょうか。 求めれば必ず、「いのちづな」は見つかるはずです。

一人で問題を抱えず、必ず相談をしてみてください。